『私と私とこれまた私』〜デッドライン・ポッポ前編〜

「ちょっと無理か」
「これも駄目」


その日の朝は家にある大きいカバンというカバンを
取り出しては“ソレ”が入るか試してみるが
どれも小さすぎて入らない。
結局、私が持っている中で一番大きな旅行カバンに
なんとか“ソレ”を折りたたみ詰めこんだ。
そして出陣前に神へと祈る。
今日は生きて帰れますように…。


(会場までドタバタ珍道中だったけど時間無いのでカット)


会場に入り戦地を確認する。
5列13番。
左が通路、しかもその一角だけ他の場所よりスペースが広くなっている。
勇者ロトになるには持ってこいの場所だった。


でも駄目だ。


ロトの鎧は半端じゃなく大きい。
一度翼を広げれば確実に後ろの人間の視界を遮ってしまう。


ライヴは戦場だ。
私は当然ながら歌い手さんの邪魔だけはしないし、
女・子供・民間人にも手は出さないがヲタには容赦しない。
これまでヲタには躊躇なしに戦ってきたが
今回は別、翼は邪道すぎる。
あれはボード厨のように単純に目障りな輩と一緒だ。
技術と体力を使ってこそ戦い。その中でこそ何かが生まれるのだ。
家の中でウォーキングマシンしちゃうような奴は
戦場に来るべきではない。


困っている私に連番相手のべ〜やん氏
「ほらあそこなら大丈夫なんじゃないですか?」と指差し。
指の先には主婦が二人、ちょこんと座っている。
その場所は8、9列で前通路、ステージの一番端という
翼を広げるには最高の場所だった。


早速おばさま達と交渉してみるが速攻で快諾を得る事ができた。
ヨン様風の笑顔をパクってマネたのが良かったのだろう。


仲間達と挨拶を済ませ座席でポッポに着替えるが、
この時の微妙な空気ったらありゃしない。
失笑も怒りもザワワな声も聞こえず、そこには静寂だけがあった。
後ろの人達は、座席交代劇の一部始終を見ているだけに
半ば諦めていたのだろうか?
それとも私がテンパって聞こえなかっただけか?
警備員は私の横に二人。こちらの視線は熱い。


ピポパポピピペポ♪   ピポパポピピペポ♪


奇跡の香りが漂ってきた。


この戦いは誰の為でもない。
鳥が大空を舞う事に何の疑問を持つ事はないように、
翼(ポッポ)を手に入れた人間は大空を舞うのは自然の摂理。


先ほどまでの体調不良が嘘のように力が溢れてくる。
咳も止まった。
さあ、いよいよだ。いよいよ始まる……




※時間が無いのでメルフォやメールは明日か明後日に
 でもさせてもらいます。申し訳無いです。