ya!ya!ya!我が家にサンタがやってきた!  

事件は午前から始まった。


年末も迫ってきたこの時期。
クリスマスが先か、倒産が先かというほど
相変わらず背水の陣の我が会社。
そのくせ朝の仕事は半端なく忙しい。
両手に電話を持って会話することもしばしばある。


その最も忙しい時間帯の11時前。私のプライベート携帯に着信があった。
見ると登録のしてない番号だ。
普段ならそこでいろいろ考える所だけど、
多忙でテンパってたので何の躊躇いなくもなく普通に出た。


「もしもし○○さんですか?今自宅にいらっしゃいます?」


30前半くらいの男が己の素性は明かさずにイキナリ質問してきた。
客でない事も判ったし、これは流石に無礼だと感じたので
一体何者だと、何のようだと強く問いただしてやった。


「あぁ、スミマセン。佐川急便です。荷物をお届けに行きたいんです」



佐川急便っ!!
この時全てを悟った。
あの別名『ヲタ選別』とも呼ばれるモームスポスターが当選したのだと。
バカでかい文字でメンバーの名前がフルネームで書かれているパンドラの箱
あの死ぬほど恥かしい箱が我が家に届くのだ。
家ではクールボーイで通している俺様宛てに届くのだ。
なるほど、薄ら笑いを浮かべたような佐川の対応も納得だった。
“ソレ”はサービスマンと客との上下関係が逆になるほどの破壊力を秘めた箱なのだ。


佐川から帰宅時間を聞かれ「19:30なら帰っている」と答えておいた。
連日21:00前後に帰宅してるのが現状だけど、
働きに出ている親が帰宅するのがだいたい19:30すぎ。
だから親より先に帰ってパンドラの箱を受け取るには意地でも19:30までに
帰宅する必要がある。
絶対に負けられない戦いが始まった。


「18:30退社っ!18:30退社っ!」心にタイムリミットを持たせながら
順調に仕事をこなしていった。帰社して後は残務処理をこなすのみ。
これなら19:00には帰れると思った矢先にクレームの電話が。
対応に追われて家に着いたのが結局19:40。


窓を見ると家の灯かりが…。


扉を開けると玄関には何もなかった。茶の間にも。
佐川はまだ来ていなかったのかとホッとする私に父が一言


「なんか変なんきとるぞ。へっ。なんやお前」


あの厳格な父が笑った。しかも鼻で。
「なんやお前」の後にどんな言葉が続くんだいファザー。
あっ、馬鹿にした?息子の事見下してる?佐川プレイ?


「おうっ。」と横柄に応えるも半分泣きそうな俺様。
(気取れば気取るほどピエロになる罠。)
パンドラの箱は俺様部屋のど真ん中に置いてあった。
ご丁寧にも名前を上にして。





地獄の夕食タイムが始まった。
変な妄想されるのが嫌なので「あれはただの等身大ポスターやで!」と
中身の説明をしようと思ったが、それはそれでアウトなので黙った。
親も黙っている。あちらもさすがに聞くに聞けないのだろう。
沈黙の食卓。世界丸見えのタケシの暴走がいつも以上にくだらなく感じた。
自己新記録の早さで夕飯を終えた。


部屋に戻り改めてパンドラを眺めてみる。
我が家に亀井絵里が遊びに来たんだと異様なテンションになってきた。





金持ち時代に購入してたティーカップに紅茶を入れて出してみた。
「返事がない。ただの箱のようだ」
でも更にテンションが高まってくる。


クールボーイで通してる自分が等身大ポスターなぞ貼れる訳ないし、
貼るとしてもあいののしか貼る気は無い。
でもパンドラの箱を開けたい衝動が抑えきれなくなって、
ポスターを取り出して見た。


デカイ!等身大以上の大きさの亀井絵里に圧倒された。
部屋に軽く貼ってみるも犬小屋にセレブが訪れたみたいで恐ろしく不釣合いな光景。
ネックレスにブレスレットにチェーン、全てゴールドのアクセサリーで
着飾った亀井絵里はエレガントでそしてロックだった。


ロック?


エレガントならお話にならないが私もロックな人生を歩んできた漢。
ロックとダンスと大富豪なら自信がある。
「ジャムるかい?」と俺。
「ヒャークマーミピートゥパァー!(勿論だZE!)」と絵里。
よし。やるか!









亀と河童の古池セッション
(※親に見られたら自殺するつもりで楽しんでる瞬間)



さて。このポスター明日からどうしようか。
あげたくない、貼れない、捨てたくない、見つかりたくないという
逃げ道の無い代物すぎる…。