ごはんと味噌汁と松浦亜弥

私は“推し”という言葉が余り好きじゃない。
○○推しという言葉を使ってる人が
コロコロと応援対象を変えてるのを散々見てきたから
いつの間にか嫌いな言葉になった。
少なくとも自分はあいののには引用しないようにしてる。


この“推し”より更に軽い言葉と捉えてるのが“ファン”。
辞書では芸能・スポーツなどの熱心な愛好者。
特定の俳優・選手・人物などをひいきにする人。
と書かれている。
愛好者。ひいきにする人。なるほどそのまんまだけど、
常用語とされすぎて『カリスマ』のように重みが感じられない。


二年前。私の嫌いな言葉の下にあるイベントが行われた。
松浦亜弥ファンの集い』
上手く説明できないけど、私にとって松浦亜弥はあいののとは
別次元で大切な人として存在している。
歌が好きで性格も生き方も尊敬しているし、
某慶太兄の時は自分でも驚くほど凹んだりもした。
人生の道標といってもいい彼女の集いに参加したいのは山々だったが、
『ファン』という言葉に反発して応募を見送った。
握手なんていい。彼女の声を歌を純粋に聴きたいだけなのだから。


こうして私が参加しなかった前回のあややファンの集いでは
ファンイベントらしい企画が行われた。
レア曲を揃えて、その中で歌って欲しい曲に対して
ファンの声援が大きかった上位二曲を松浦さんが歌うというもの。
選ばれた一曲は当時幻だった『LOVE CHANCE』。
そしてもう一曲は一般大衆曲の『ね〜え?』。


このイベント話を聞かされた時、絶叫したのを今でも憶えている。
ファンの集いなら多少なりとも彼女が好きで応援して理解してる
人間が集結してると思ったのが間違いだった。
そしてリベンジを誓う。次回は必ず参加してやる!と…。


あややと過ごすファンの集い』。


あれから二年。ようやく機会が巡ってきた。
もう逃げない!ファンとかもうそんな括りどうでもいい!
私は自爆する覚悟で参加を決めた。
もう二度とファンの集いでシングルA面を歌うなんていう
悲劇は繰り返してはならない。



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あややと過ごすファンの集いinシアターBRAVA』



芸人二人の司会者が『スケバン刑事』のマネなど、
あれこれ賑やかそうとするも場内一向に暖まらず、
冷え切った空気の中で松浦さん登場。早速二人にダメだし。


その後スケバン刑事の未公開VTRの披露や撮影裏話、
二十歳の誕生祝VTRなどなど。
誕生祝いVTRは和田アキ子BOAなど豪華な顔ぶれ。
番組繋がりもあるんだろうけど、
それを含めてもハロプロ外とこうして交流を持ってる
松浦さんはハロプロの開拓者なのだとしみじみ感じた。


そして運命のミニライヴが始まった。
俺の死に場所!…と思ったら曲が勝手に進行していく。
前回のファンの不甲斐無さに呆れたのか、集大成を見せたかったのか、
3枚のアルバムから自ら選曲した曲を歌っていく松浦さん。


『私のすごい方法/First Kiss
『ダイアリー/T・W・O』
『恋してごめんね/×3』


『私のすごい方法』
たった10年そこそこの人生 浮かれてる暇もないけど
 私じゃないと出来ない方法 この手で掴んでやる


『ダイアリー』
ひと月経って初めて会うけど 心を打ち開いてみるのも 
 ああ、悪くない 


『恋してごめんね』
恋してごめんね 他に好きな人できて
 恋してごめんね 浮気はできないんだもん 


上京して右も左も判らない不安な状況の中
自分の可能性や進む道を模索して、
信頼できる仲間ができて心が豊かになって、
恋してごめんねと開き直るちょい悪あややになったりと、
意図なのか、気のせいか判らないけど松浦亜弥
これまでの半生を振り返った選曲に思えた。



彼女は言った。
从‘ 。‘从<デビューして6年。私が歳を重ねていってるように、
      ファンの皆も歳を重ねてるんだよ。   
      20歳から応援してくれてる人は26歳だよ。(笑) 
      これからも一緒に歩んでいきましょう。
   


春ツアーでも何度も口にしていた言葉。
さだまさし松山千春級の人物しか口にできない言葉を、
彼女はしみじみと語りかけてくれた。
デビューしてたった6年だけど誰よりも濃い時間を過ごしてきた
あーやだからそんな事言えるんだし、
彼女と共に泣いたり笑ったり同じ時間を共有してきた者にとっては
それは何よりも愛すべき尊い言葉だった。


「最後の曲はこの方をお呼びしました」と
編曲者の高橋輸一氏をステージに招聘するあーや。
彼女がデビューからお世話になってる偉大な作曲、編曲家でありギタリストだ。
椅子に腰掛けた高橋氏のギター一本で歌い上げる最後の曲は『初恋』。


あの人はいつも 私のそばにいた
あの人はいつも 離れずいてくれた


この曲を聴くと心身ともにボロボロになりながら、
ファンに自分の弱さを見せてくれた二年前のツアーを思い出す。
私の中で彼女に対して尊敬と同じくらい友愛の気持ちが芽生えた日。


彼女はいった。


从‘ 。‘从<普段は元気だけど寂しくなるときもあるんです。
      そんな時この曲を聴くと皆がそばにいてくれてると思うの。 


从‘ 。‘从<ここに来てる人は友達みたいなもんだと勝手に思ってる


私にとって松浦亜弥とは何なんだろうとたまに自問自答する。
答えは未だ見つけられない。
ただ、もし私が結婚して子供が出来たとしても
家族でライヴに参加したい。応援したいと思う
人物という事だけははっきりとしている。




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              《番外編》



思わぬ『初恋』のサプライズで感動に浸っていると
芸人司会が「さぁ皆さんいよいよお待ちかねの握手会ですよ!」と
悪魔の声が聞こえてきた。
危ない!逃げなきゃ!と浮き足立つ客席とは
反対にひとり一目散へと出口の扉へと向かう。


会場内からロビーへと出る扉は警備員もおらず簡単に開いた。
問題は入退場口から会場外へと続く扉。
案の定警備員5、6人が出口扉に立っており、
扉へと続く道は黄色の柵で塞がれていた。


絶体絶命のピンチ!
ここで戻されたらまさかのあーやと握手。
何の心の準備もなしに天下のあーやなんかと握手したら俺絶対おかしくなる!
ジダンの頭突き以上にトリッキーな動きをしてしまう!


松浦さんがファンを信頼し接してくれるように、
私も係員を信頼して魂の全てをぶつける事にした。


ずんまぜぇぇんっ!!出たいんでずぅ!


『初恋』が披露された直後の為に、文字通り泣きながら訴えた。
手にはハンカチを握り締め、走りこんで訴えるおっさんに
係員は少し狼狽しながらも
「えっ!?もうお帰りになられるということでよろしいでしょうか?」と
聞き返してきた。「はいいっっ〜!はいいぃぃ!」と即答するわたくし。
「さぁどうぞ」と濡れた子猫を見つめるような目で柵をどけてくれた係員。
私は後ろも振り返らずに一目散に走り抜けた。


そしてひと気の無いアスファルトに寝転がり、
ファンイベントを振り返る。
スケバン刑事…観に行かなきゃ!
VTRのコーナー…亜弥美貴はガチ!
歌…ピン逃げダッシュ☆カナ




『アヤグリア』
ワイハ貴族の亜弥ヲタべーやん氏も同じレポ書いてますので、
興味のある方は是非どうぞ。
本人に「絶対紹介してくれやゴルァ!」ってリアルで何度も
言われた力作です。