SHALL WE HELLO-DANCE? -1STEP-

彼女達を応援しているという事が私の誇りだった。
二人の事を考えるだけで勇気を持てたし何でもできる気がした。
あの頃私は無敵だった。


一体これからどうすればいいのだろう。
「次は誰推すの?」なんて聞かれてもあいののの代わりなど、
いるはずもなく「いつまでも待つだけさ」と答えるばかり。
辻さんの来年復帰は間違いないとして、ただこのまま待つだけ
というのもさすがに悲しすぎる。


きっと今の私にも出来る事があるはず。
二人が最後まで身を持って教えてくれた攻めの姿勢を受け継いで
自分もギリギリまで攻め込むしかない。
彼女達を応援してきて一番自分の身になったこと、楽しかったこと、
二人の為になる可能性のあること…。


私の目の前に一筋の光が見えてきた。



    --------------------------------------------------



あれから数日後。私はドアの前を行き来していた。
扉を開ければ確実に恥ずかしい思いをする世界が待っている。
だが、こんなトコで迷っている訳にはいかない。
前に進むしかないのだと意を決して扉を開けた。


目の前に広がる20代、30代の女人の園。
そして奥には大きなダンスフロアが二つ。
そう。私はストリートダンスを極めようと決意したのだ。
思い返せばダンスの一つも踊ったことも無い私が
ミニモニ。ジャンケンぴょん!』をキッカケにダンスの楽しさを憶えた。
ダンスのスキルを上げる事によって少なくとも座して待つよりは
いろんな可能性が出てくる。
世界一のダンサーになれたなら「全ては加護C辻Cのお陰だYO!」と
インタビューに答えられるし、どこぞのバックダンサーでもなった日には
後ろで勝手にダブルユーの振りを混ぜて踊るつもりだ。
夢は大きく!そして攻めだ!ダブルユー推しなら常に攻めなきゃいけない!
W推しの残党の力を思い知らせるのだ!



……。
………。
オドオドと周りを見渡す私に受付の女性が声を掛けてきた。
入会希望ですか?それとも体験レッスンでしょうか?と。
私は迷わず体験レッスンをチョイス。
そして必死に「初心者なんで!初心者なんでっ!」と自己アピールした。
微笑する彼女。路頭に迷ったおっさん丸出しな私が初心者なのは
言わなくても判るということなのか、はたまた私に惚れたのか。


ここのダンススクールは曜日と時間帯によって教える
ダンスの種類と先生が決まっており生徒は
それを選んでレッスンを受けるというシステムになっている。
受け付けの彼女は私に聞いてきた。


「踊ってみたい曲とかありますか?このアーティストが好きとか」


アァンッ!?LOVEアーティストといえばダボゥユーに決まってるやん!
踊るといえば『お菓子つくっておっかすぃー!』だよネ!
あれ難易度高すぎー!><

などとは口が裂けても言えず「ア、アニメーションですかね…。」と答えた。
それならと『POP(※ダンスのジャンル名)』を勧められたが
紙には“女性ONLY”と書かれてたので速攻で断わり、
変わりに私は『Hip Hop入門』を指差した。


「HEY!YO−!」みたいなイメージ以外何も知らないHIPHOP。
入門という言葉だけでチョイスしちゃったHIPHOP。
こうして私は神の世界に一歩足を踏み入れた。


俺の名はでんでん。最強民族Wヲタの残党。誰にも負ける訳にはいかない。