『We are Buono!初日レポ!!』


君は何にも気付いてないけど
君は何も気にしてないけど


「いらっしゃいませ♪」
元気に迎えてくれるその笑顔でいつも心は満たされる。
町外れの小さな喫茶店。ボクの隠れ家。
こぼさないように小さな両手でしっかりと握り、
それでいて笑顔を絶やさず彼女は水を運んできた。


「今日も寒いですね♪」
両手を擦り合わせながら寒そうにおどけてみせる彼女。
“店内だからホントは暖かいんだろ?”と少し意地悪な返事をすると、
「増えるワカメぁが○★△」と言葉にならない声を上げてはにかんでる。
私はその様子を少し醒めた目で見つめながら、ココロは幸せで満たされていた。


突如「カラン カラン」という鈴の音が店内に響く。
「あ、いらっしゃいませ!」と目線をそちらに向ける彼女。
どうやら別のお客様のご来店のようだ。
彼女の名前を大声で呼び寄せようとするその“お客様”。
看板娘である彼女が人気なのは重々承知なのだが、
あの笑顔を同じように他人へと向けるのを見ると胸が苦しくなる。


あたし以外のヒトを好きなら
真実の気持ちなんか知りたくないんだよね


別に彼女と何をしたい訳じゃない。
いつまでも曇りのない笑顔を見ていたいだけなんだ。
だけどふと頭をよぎる時がある。
彼女もきっとこれから素敵な恋をして、
誰かの為だけにこの笑顔を向ける日がくるのだろうと。
親に69歳で再婚されて仕事崖っぷちの私がいつまでも
彼女の笑顔に甘えてる訳にはいかない。


それでも会いたくて切なくて 切ないくらい恋しくて
それでも会いたくて言えなくて 言えないくらい苦しくて


寂しく窓を眺めてると、先ほどの“お客様”の元から
彼女が急ぎ足で戻ってきた。
「いなくなって本当にごめんなさい!」と今にも泣きそう。
普段からハの字眉で困り顔の彼女が本気で謝るその姿を見たら、
逆に謝られる方が申し訳なく思う。そんなオーラを彼女は持っていた。
全然気にしていない旨を伝えたら、彼女の顔が“ぱぁー”と
花が咲いたように明るくなった。


やっぱり私はこの笑顔が好きだ。
はにかんだ時にうっすら見える八重歯。
人を幸せにする力を彼女は持ってる!
見つめる私に彼女は恥ずかしがりながら下を向く。「あのぅ…」。
じっくり見すぎて彼女を困らせてしまったようだ。
反省している私に対して彼女はこういった。



「そろそろご注文は決まりましたか?」